ミラノコレクション2018春夏

この9月に開催されたミラノコレクション は、展示会の数が102、ショーの数は61、う ち10ブランドは男女の合同コレクションの形
態で発表された。
これだけの数を追いかけるために、ひたすら 時間と戦う5日間であった。あと1日あれば、 という声も少なくなかった。 今回のハイライトは、イタリアファッショ ン協会の第一回のグリーンカーペットファッ ション賞。持続可能な素材なども含めて、地 球環境の保全を狙いとする賞の誕生である。 この決意が生み出す今後の成果を見守りたい。 その歴史が40年に及ぶミラノの既製服のビ ジネスは、今日、870億ユーロに達している。 対中国と韓国への輸出も6%の伸びを示して
順調である。
今回のミラノでは、非対称の分割、スポー ツシック、カジュアル、軽さ、透明感、光、 重ね、フェミニン、ロマンテイシズム、フリ ル、レース、デニム、ナイロン、PVC、など が目立つ。繊細な色のニュアンス、漫画や、 あるいは写真あるいは言葉を用いてアートと しての表現や意識の伝達の手段とする服の例 も珍しくなくなって久しい。 80年代がちらつく。
1980年までに生まれた世代とミレニアム世代 とではミラノコレクションの理解も異なれば、
市場の要求も別である。 前者は高品質、高級素材、優れた手仕事、ラ グジュアリを要求し、後者はエコロジカル、 ソーシャル、自由なスタイルに敏感である。 ミラノでは、完璧な高級感を追求する80年代 以来の重鎮が健在であ る一方、ヴィエン、アンナキキ、MSGM、no.21, アンベッセル、プリージ、アルビーニ、コラ ンジェロ、ヴァノッテイ、ミアオラン、デヴィ ンチェンツオなど急速に数を増やしている若 いデザイナー達は、前者のグループに比べる とより自由でカジュアルなストリートスタイ ルを、今回はロマンチックでフェミニンな気 分にまとめている。

1980年代はポストモダンの時代である。 歴史の中の幾つもの異なる時代の、異なる様 式や形式や美意識などを要素に分解して、組 み合わせ直す。 このポストモデルニズムは、いわば、現在の 情報化社会の創造の方式への、先駆けたる存 在である。 今我々が生きているこの世の中は、まさに各 種情報の幾多の破片のつなぎあわせが作り出 す偶然の産物をクリエーションと呼びさえす
る。
ここには、概念の抽象化は存在しない。 現在のグッチの手法はまさに、この80年代、 ポストモダンのそれに他ならない。
様々な要素を混ぜているために、グローバル で多様性に満ちているように映る。今回も膨 大な具体的情報の破片を組み合わせると言う いつもの手法で、マニエリステイックなコレ クションを発表した。ヒップスターや漫画の 主人公を身近に感じさせてくれるこのブラン ドは、いわばコスプレセルフィー世代にとっ ては、この上なく、変身願望をそそられるコ レクションなのに違いない。 前回、NYはブルックリンの服の仕立て人、 ダッペルダンが80年代の服のデザインをグッ チが無断で使用したということでクレームが つけられたという出来事もグッチの現在の手 法の何たるかを語るものである。 一方、プラダは、同様に多種の情報を取りい れつつ、今回も反体制の女性、アンアーグラ ウンドでアンドロジーナの、強い女性を提案 して、強烈な印象を残した。 9人の女性の漫画家の作品の組み合わせから なるプリントのコートにみられるように、各々 のモデルの服装には、異質の要素複数がぶつ かり合うところに生まれる反発のエネルギー の総体が火花を照らす。これは、伝統的な西 洋の美意識に順応するのではなく、逆にそれ に反抗するものである。よりパンクの意識に
近い。
そのような状況を見越して、ヴェルサーチェ はジャンニヴェルサーチェが亡くなって20
年の追悼として、ジャンニの時代のスーパー モデル達を使って当時のコレクションを再現 して見せた。ドルチェエガッバーナも80年 代当時の彼らの情熱的な雰囲気を感じさせ、 プラーダでは、80年代に同ブランド再生の 基礎を作り上げたナイロンのバッグやコート も登場させていた。フェッラガモもブランド の 周年を記念して大掛かりなショーを開 催。ミッソーニでも40周年を讃える夕食会 が開かれた。80年代は、若い世代にとって は過去ではなく、未来に等しい。 了